【朝ドラで話題】小泉八雲の最高傑作|おさえておきたい超有名「怪談」3選!
2026年02月17日12時00分
小泉八雲の「怪談」とは?
小泉八雲(こいずみやくも)は、今から100年以上前に日本にやってきた外国の作家です。
出生名(生まれたときの名前)はパトリック・ラフカディオ・ハーン。ギリシャで生まれて、様々な国に移り住んだあと、日本の文化や伝承に心からひかれました。
そんな彼の代表作といわれるのが「怪談」という短編集。この「怪談」の完成には、妻であるセツの協力も欠かせませんでした。八雲と同じように昔話や怖い話が好きだったセツは、八雲のために日本の伝承・伝説を話して聞かせたといいます。
セツから聞いた物語を英語でまとめた「怪談」は世界中で読まれ、日本という国の文化を伝えることにも貢献しました。今回は、その中でもとくに有名な3編を紹介します。
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耳無し芳一(みみなしほういち)
ある寺に、目の見えない、芳一(ほういち)という名の琵琶法師がいました。
芳一は琵琶の名人で、とくに、平家物語の一節、源氏と平家が海で戦った「壇ノ浦(だんのうら)の戦い」の場面を語らせたら、聞く人みんなが涙を流すほどの腕前だったのです。
ある夏の夜、芳一が一人でいると、立派な武士があらわれて言いました。
「高貴なお方が、あなたの琵琶を聞きたいとおっしゃっています。ついてきてください。」
案内されたのはたいそう立派なお屋敷で、そこにはたくさんの人がいるようでした。
芳一は壇ノ浦の戦いをみごとに語り、その美しさと悲しさに、屋敷じゅうの人々が涙を流しました。
また明日も来るようにと頼まれた芳一は、それから毎晩、屋敷へ通うようになります。
毎晩寺を留守にする芳一を不審に思った和尚様(おしょうさま)は、寺のものに芳一の様子を見に行かせました。
すると、夜になって芳一が向かっていくのは、さびれた墓地でした。
芳一が通っていたのは、平家の武士たちが眠る墓場だったのです。
目の見えない芳一は、亡霊に誘われ、毎晩平家物語を語り聞かせていたのです。
このままでは芳一が幽霊にさらわれてしまう…。
心配した和尚様は、芳一の体中にお経を書いて、幽霊から見えないようにしました。
ところが、あわてていた和尚様は、耳にだけお経を書きわすれてしまったのです。
その夜、武士の霊が芳一を呼びにやってきましたが、お経のおかげでその姿は見えません。
でも、耳だけがぽっかりと宙に浮かんで見えています。
亡霊は怒りのこもった声で言いました。
「芳一の姿がどこにもない。しかし、不思議と耳だけある。探しに来たという証拠に、この耳を持って帰ろう」
次の瞬間、芳一の耳に燃えるような痛みが走りました……。
こうして両耳を失ってしまった芳一は、それ以来「耳無し芳一」とよばれるようになったのです。

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むじな
ある商人の男が、東京・紀伊國坂(きのくにざか)を通りかかったときの話です。
あたりはすっかり暗くなり、道には人影もありませんでした。
歩いていると、お堀の近くでしゃがみこんで泣いている女の人がいました。
こんなところで一人泣いているとは、ただごとではないと思い、男はやさしく声をかけました。
すると女の人は、ゆっくりと男のほうへ振り向きました。
その女の人の顔には、目も鼻も口もありませんでした。
おどろいてその場から逃げ出した男は、必死に走った先で小さなそば屋の屋台を見つけます。
男は息も絶え絶え、自分の身に起きた恐ろしい出来事を伝えようとしますが、言葉がうまく出てきません。
すると、大あわてで話す男をなだめながら、そば屋の主人がゆっくりと口を開きました。
「あんたが見たっていうのは、こんなもんじゃなかったですかい?」
そう言って主人が顔をなでると、その顔もまた、青白く、卵のようにつるんとしたのっぺらぼうへと変わってしまったのでした……。
むじなとは、タヌキやアナグマのことで、人をばかす動物と言われています。

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雪女(ゆきおんな)

ある吹雪の夜、山で仕事をしていた木こりの巳之吉(みのきち)と、茂作(もさく)は山小屋に逃げこみ、そこで一晩を過ごすことにしました。
夜中、凍えるような寒さに巳之吉が目を覚ますと、小屋の中に真っ白な着物を着た、とても美しい女がいました。
女は茂作の上に乗り、なにやら白い息をふきかけていましたが、巳之吉を見つめいいました。
「お前は若くきれいだから、今は許してやることにした。だが、今夜のことをもし誰かに話したら…その時はお前の命はないと思うがいい。」
そう言い残して、女は消えていきました。
あとに残された茂作の体は、氷のように冷え切っており、すでに命はありませんでした。
あくる年のある晩、巳之吉は旅の途中でお雪という美しい娘と出会いました。
二人は意気投合し、恋に落ち、やがて結婚しました。お雪はやさしく、とてもよい妻となり、二人の間には十人もの子どもも生まれ、幸せな日々が続きます。
しかし、不思議なことに、お雪は年をとっても若々しく、まるで雪のように白く美しいままでした。
ある雪の降る夜、子どもたちを寝かしつけた後でぬい物をしているお雪を見て、巳之吉はふと昔おこった奇妙な体験を思い出しました。
「お前を見ていると、昔会った美しい女を思い出すよ…。」
巳之吉がこぼしたその言葉を聞き、お雪は、その人のことを話してみてほしいと言います。
そうして、巳之吉はあの恐ろしい夜の出来事をお雪に話して聞かせました。
すると、お雪はぬい物を投げだし、顔色が変えて巳之吉におおいかぶさってきました。
そして面と向かって叫びます。
「その女は私だよ。その雪女が私だったんだよ!」
驚く巳之吉に、お雪は続けます。
「誰かに話せば命はないと言っただろう。だが、こうして眠っている子どもたちの顔を見ていると、どうしてもお前を殺すことなどできない。この子たちの身に何かあるようなことがあれば、その時こそお前を相応の目にあわせてやる。」
そう言い残して、お雪は白い霧となり、天井へと立ち上って消えてゆきました……。
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(参考文献)
怪談 決定版 (角川ソフィア文庫)
まんがで読む小泉八雲「怪談」 (学研学習まんがシリーズ)
【まんがで読む 小泉八雲『怪談』】
この記事で紹介した3編の他にも「怪談」に描かれるのは日本の怖い話の原点といえる名作ばかり。そんな八雲怪談がまんがになりました!
まんがならではの迫力ある描写で怪談の世界を体感できるだけでなく、各場面にはわかりやすい解説がついているので、時代背景や文化も自然に学べます。


