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『たべっ子どうぶつ THE STORY』 著者・池田テツヒロ氏に特別インタビュー!

2025年07月04日10時00分

人気ビスケットのイラストから生まれた、勇気と絆と感動の物語

世界中を笑顔にしてきたスーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」。彼らが久しぶりに故郷に帰国すると、街はピンクの綿あめだらけ。しかも、世界征服をねらうキングゴットン率いる最凶の綿あめ軍団に、ぺがさすちゃんが捕らえられて……。人気ビスケット「たべっ子どうぶつ」のイラストから生まれた物語、『たべっ子どうぶつ THE STORY』。著者・池田テツヒロ氏に、物語の創作秘話をうかがいました。

▲人気ビスケットのキャラクターが大活躍する、『たべっ子どうぶつ THE STORY』

 

 

――『たべっ子どうぶつ THE STORY』は、映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の物語を深掘りしたものとなっていますが、小説の冒頭から映画にはないエピソードが始まり驚きました。小説は、映画とどう違うのでしょうか?

池田さん(以下、池田):映画では、90分という制限の中で、子どもたちにも楽しんでもらえる作品に仕上げる必要がありました。そのため、たべっ子どうぶつたちの繊細な心の動きや、物語の背景となる状況説明を、泣く泣く削らざるを得なかった部分もあります。

一方、小説ではその制約がありません。舞台であるスイーツランドがどうやって生まれたのか、オカシーズたちに託された使命、人間との関わり、ねこちゃんが密かに抱える思い、物静かなぞうくんの心の奥にある闇、そして、かばちゃんとさるくんの意外な活躍……。映画では語りきれなかったエピソードを、余すことなく盛り込んでいます

読者の皆さんに、たべっ子どうぶつたちへの愛着をより一層深めていただけたら、嬉しいです。

――小説では、たべっ子どうぶつたちに人間のような性格や深い心情が描かれていて感動しました。どのようにエピソードをつくっていかれたのでしょうか?

池田:たべっ子どうぶつたちは、10人(匹?)のにぎやかなグループ。メインキャラとしては、かなりの人数ですよね。でも、誰ひとりとして記号的にならないよう、それぞれの内面を丁寧に掘り下げました。

キャラクターの弱さや欠点は、すべて私自身の中にあるものです。だからこそ、彼らの感情にリアリティを与えるのに苦労はしませんでした。

例えば、大きな身体に反して気が小さいきりんちゃん。劇場の客席で、後ろのお客さんの迷惑にならないよう、つい体を縮こめてしまう……それは、まさに“私”自身。そして、調子に乗っては手痛いしっぺ返しをくらうチャラ男のさるくんも、やっぱり“私”なんです。

きっと、読者の皆さんの中にも、彼らの“弱さ”に共感できる部分があるのではないでしょうか。

――キャラクターたちは、池田さんの分身なんですね。深い愛情を感じます。その中でもあえて推すとしたら、どのキャラでしょうか?

池田:推しキャラは……、私はもともと、コントユニットで脚本・演出・主宰をしていたこともあり、頼りないリーダーのらいおんくんには、強い親近感を抱いています。私もメンバーをまとめ上げることに四苦八苦しておりました。あ、でも、推しキャラはかばちゃんです! 小説で盛り込めた、かばちゃんがつけている香水のエピソードはお気に入りです。

――どのキャラクターも愛おしいエピソードや心情がありますが、特に思い入れのあるものを教えてください。

池田:らいおんくんが、ぞうくんの指示でゴッチャンを尋問するシーンでは、ミステリー小説好きなぞうくんの“ヘンタイ性”が明るみに出ています。そんな彼に対して、らいおんくんは思わずドン引きするのですが、その心の動揺を、これでもかというほど細かく描き込みました。ふたりの関係性がよく伝わるシーンになっています。

――らいおんくんとぞうくんの関係性は、映画を観た方の感想でも、メロいと話題になったそうですね。

池田:はい。って実は、メロいって言葉を正しく理解はしていないのですが(笑)、ふたりの関係性は、小説で読むとさらに楽しめると思います。また、わにくんの“縁の下の力持ち”ぶりや、さるくんが実はグループの調整役としてさりげない気配りをしていることなど、映画では描ききれなかったエピソードも盛り込んでいます。特に、クライマックス前に、さるくんが率先して人々を救出するシーンは、ムネ熱です。

 

▲スーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」のメンバー10人(匹?)の内面も明らかに。

――小説は最初と最後を比べると、主人公が大きく成長することがありますよね。今回、成長については、どんなお気持ちで書かれたのでしょうか?

池田:少年少女時代を注目されずに過ごした経験がある人なら、きっと共感してもらえると思うのですが、私は、自己投影したキャラクターには「あんまり成長してほしくない」と思ってしまうんです。もう、ダメならダメなままでいい。無理に変わらなくていい。……というより、ボクを置いて、遠くへ行ってほしくないんです。

それは、たぶん少年時代の私自身の切実な願いなんだと思います。

――池田さんは以前、「ダメなところがあっても変わらなくていい」とお話されていました。とても印象的でした。

池田:もう少し踏み込んで言うと、「ダメなところって、本当にダメなの?」って思うんですよ。だって、“ダメ”って、面白いじゃないですか。ダメは弱点じゃない。魅力のひとつだと思うんです。例えば……『裸の銃を持つ男』のフランク・ドレビン刑事だったり、Mr.ビーンだったり。完璧じゃない、どこか抜けている、そんなダメな奴らが、ダメなままで、ダメな感じで生きている。だけど、なんだかサイコーじゃない? ――そんなユートピアに、私は住んでみたい。

でも、それって今の現実社会ではなかなか許されないことかもしれません。だからせめて、物語の中だけでも――そんな場所があってもいいんじゃないかって、思うんです。

――たべっ子どうぶつは小説の中で、自分のダメなところに落ち込んで終わりではないですよね。いろんな場面で感情が揺り動かされました。こだわったポイントはありますか?

池田:逆に、私のほうから皆さんにお聞きしてみたいんです。「どこで感情が揺れましたか?」って。

映画館で観てくださった方々の感想を伺うと、本当に反応がバラバラで驚かされます。ある人は号泣しているのに、その隣では大爆笑している人がいる。同じシーンなのに、まったく違う感情が引き出されているんです。

――子どもと大人の笑うシーンも違っていて、面白いなと思いました。

池田:おそらくこの物語は、「誰に感情移入するか」によって、見え方も、感じ方もガラリと変わるのだと思います。ですから、作者である私にも、分析なんてできません。

ただ、ひとつ言えるとしたら――すべてのキャラクターの行動原理に、私自身の「想像を超えたもの」を置かなかった、ということ。つまり、すべて私の実体験や感情をベースにして物語を組み立てています。

それが、皆様の心に、何かしら響いたのだとしたら――嬉しいを通り越して、「一緒に物語を盛り上げてくださり、ありがとうございます」という気持ちです。

ちなみに、私の描きたい物語は、大笑いした後に涙が止まらなくなるようなクライマックスなんです。なかなかの難題に挑戦していると思います。

――今回、子どもだけではなく、大人も読んで楽しめる小説として執筆されたそうですね。執筆にあたり、意識されていたことはありますか?

池田:私は脚本家としても俳優としても、コメディ作品に関わらせていただくことが多く、自分自身もとにかくコメディが大好きなんです。でも、大好きだからこそ、人を笑わせることの難しさも痛感しています。

……いやあ、小説で笑わせるって、本当に難しいですね(笑)。顔芸はできないし、奇声を発するわけにもいかないし、あの“間”すら文字では表現しづらい。

ちなみに、コントユニットで活動していた経験から言うと、すべてのギャグが爆笑を取る必要はないと思っています。クスッと笑える一言や、「なにこれ?」と引っかかるような表現が、あとからじわじわ効いてきて――気づけば大爆笑、あるいは感動に変わっていたりする。そういう“伏線ギャグ”のようなものも、私はあえて書くようにしています。

今回の小説にも、「なにこれ?」っていうギャグがたくさん散りばめられていますので、どうか覚悟して読んでください(笑)。

いつか、子どもも大人も一緒に大笑いできるような、抱腹絶倒の小説を書いてみたいです。

――イラストレーターの富樫一望さんの描きおろしイラストの印象はいかがでしょうか?

池田:愛らしさが詰まった、素晴らしいイラストですね。特に表紙がステキ! 思わず手に取りたくなるウットリとした、かわいらしさですね。

物語の序盤――まだ敵対する前の“カワイイ、けれどどこか不穏な”キャラクターたちを見上げるたべっ子どうぶつたち。そのワンシーンを、美しく、そして絶妙な不気味さで描いてくださっていて(ぺがさすちゃんがちょっと睨んでいるのがミソ!)……構図の妙に、思わず息を飲みました。

裏表紙には、別行動をとるふたりのキャラクターがしっかり描かれていて、それもまた嬉しい発見です。

そして何より――カワイイだけじゃない! ヴィランの怖さが……もう、トラウマ級。夢に出てきそうです(笑)。

――原作の「たべっ子どうぶつ」のイラストを、本当に優しく表現されてますよね。

池田:富樫さんの繊細で美しいタッチ、本当に見事です。テレビ番組の『プレバト!!』で色鉛筆特待生をいただいた私ですが、完全に脱帽! 参考にさせていただきます!

▲絵本作家・イラストレーターの富樫一望氏が、やわらかなタッチで、「たべっ子どうぶつ」のあたたかい世界を表現。

――今後書いてみたい小説のテーマはありますか?

池田:小説にしてみたいアイデア、実はたくさんあるんです。特に、ミステリーとホラーは、ずっと挑戦してみたかったジャンルです。

ホラーについては、すでにドラマの脚本として書いたことがあります。ただ、執筆中に必ずパソコンがフリーズするんですよ……本当に。だからちょっとだけ躊躇してます(笑)。

ミステリーは、あの、今をときめく占い師・星ひとみさんに「あなたのコメディは独特すぎるから、ミステリーを書くといい」とオススメされたのがきっかけです。

――ホラーの執筆エピソードが、もうすでに怖いです。

池田:そしてもうひとつ。いつか絶対に書きたいと思っているのが、破天荒だった私の母の人生です。

母は60歳の誕生日に亡くなってしまったのですが、最期の言葉が「遊びすぎてごめんなさい」だったんです。……なにそれ!? どれだけ遊んだのか、気になりますよね(笑)。

彼女の人生を、赤裸々に、そして感謝を込めて物語として書き残したい。そんな気持ちを、ずっと大事に持っています。

――今後のご執筆も楽しみです。最後にメッセージをお願いします!

池田:私はこの本を、お菓子が好きなすべての方に向けて書きました。

『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』をご覧になった方はもちろん、まだ観ていない方でも楽しめる内容になっていると思います。

たとえば、難しい会議資料に目を通したあとや、分厚い専門書を読み終えたあと、あるいは、重厚な小説を読み終えたあと……そんな「ひと息つきたいとき」に、“別腹”で読んでいただくのに最適です。まるで食後のスイーツのように、『たべっ子どうぶつ THE STORY』を味わっていただけたら、とても嬉しいです。

とはいえ、終盤の怒濤の展開は、かなりハラハラしますので、覚悟はしておいてくださいね!

 

©ギンビス ©劇場版 「たべっ子どうぶつ」製作委員会

池田テツヒロ

1970年生まれ、東京都出身。主な著書に「行け!男子高校演劇部」(Linda BOOKS!)「ミックスサンドイッチ」(徳間書店)。映画「劇場版パタリロ!」、ドラマ「吉祥寺ルーザーズ」などの脚本も手掛ける。俳優として多くの映画・ドラマ・舞台で話題作に出演しており、俳優名義は池田鉄洋。

『たべっ子どうぶつ THE STORY』

スーパーアイドル「たべっ子どうぶつ」が、世界征服をねらう、キングゴットンと綿あめ軍団に立ち向かう。たべっ子どうぶつは、仲間とスイーツランドを救って、みんなを笑顔にできるのか? 勇気と絆と感動の物語!